「となりのトトロ」でメイちゃんがトトロにあったことを家族に告げると、さつきさんが「それって絵本に出てきたトロルのこと?」と聞き返す場面がある。トトロは実はトロルなのだ。
そして、ハリーポッターにもトロルが出てきた。そして、今「アナと雪の女王」でもトロルはまるで出るのが当たり前であるかのようなキャラクターとして出ている。
トロルで最初に市民権を得たキャラクターはムーミンだと思うが、しかし、それよりもずっと今のトロル像のほうがトロルとして浸透している。なぜか。
今考えてみると、これは実にすごい成功物語であるように思える。
トロルというのはノルウェーの民話に出てくる妖精である。巨大で馬鹿で日光に当たると破裂してしまう。背中に木が生えていたりする。愛すべきキャラクターだ。
アスビョーンセンとモーという2人の人物が、ちょうどグリム兄弟がドイツでそうしたように、ノルウェーの民話を収集した。その民話はとても質の高いものだ。
でもそれだけではここまでトロルはヒットしなかったかもしれない。
1988年にリレハンメルで冬季オリンピックが開かれた。このオリンピックは、他のオリンピックと違ってどこかの大都市が誘致したのではなく、近隣の小さな市町村が協力して誘致に成功した。地域振興の鑑のようなオリンピックである。
これに先立って、リレハンメルにはノルウェーのかつての生活を再現する明治村のようなテーマパークが作られ、また近郊のフンダーフォッセンにトロルとノルウェーの民話をテーマにした子供向けのテーマパークが作られた。入り口には数メートルもある巨大なトロル像がつくられ、中には童話の一場面一場面を人形で再現した展示が並べられた。外には子供が乗れるようなミニチュアの汽車などもあるのだが、メインはこの童話の世界なのだ。
そして、ノルウェーの民話が、訪れた多くの人が読めるように各国語に訳された美しい装丁の本が用意された。
オリンピックに行った人々は、きっとここを訪れて、この魅力的なキャラクターに接し、絵本を買って帰って自分の国で子供と読んだに違いない。ノルウェーにはあんなに面白いキャラクターがある!それは恐らく多くの国で受け入れられた。そして最終的にはアナと雪の女王の大ヒットのようなものに結びついたのだと思う。
ハリウッドでヤマタノオロチの映画ぐらい作られてもいいかもしれないと思う。そのためには、せっかくここに来た外国人に「雲南にはそういうものがありますよ」というアピールが必要かもしれない。